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1986(昭和61)年のこの日、アメリカのスペースシャトル・チャレンジャーが
打ち上げられ、発射74秒後に爆発し、乗組員7人全員が死亡した。
作家・大江健三郎は『治療塔』の中でこの事故を「宇宙意志からの警告」と
表現しました。
今日の一冊は、『大江健三郎全小説:治療塔』(大江健三郎/著)です。
大江健三郎初のSF作品。およそ50年後くらいの近未来の日本が物語の
舞台となります。限定的核戦争と原発事故によって荒廃した地球。そこから
脱出したものの帰還してきた「選ばれた者たち」と「残留者」。それは、現
在推し進められている富裕層と、そこから取り残された大衆層の二極化を髣
髴とさせる世界。「残留者」たちは、資源が浪費され、汚染された地球で生
き延びてゆく。出発から10年後、宇宙船団は帰還し、過酷な経験をしたはず
の彼らは一様に若かった。その鍵を握る「治療塔」の存在と意味が、イェー
ツの詩を介して伝えられる。著者初の近未来SF小説を復刊し、読み応えのあ
る作品です。