『雲の上の縁人紹介』お二人目は、小さな図書室時代は勿論のこと、雲の上の図書
館、ひいては梼原町きっての読書家
梼原町にお住いの:片岡昭夫(かたおか あきお)さんです。
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以下、片=片岡さん/ 雲=雲の上の図書館
雲:今日はよろしくお願いします。片岡さんは梼原のお生まれですか?
片:実家は梼原にあり、元を辿れば葉山の片岡家に通じる家系ですが、私が生まれ
たのは巡査をしていた父の勤務先である高知市の小高坂(こだかさ)です。
雲:おいくつになられましたか?
片:昭和6年生まれ、今年(令和4年)で91歳です。
雲:どのような幼少期を過ごされたのでしょうか?
片:とにかく本が好きで、活字中毒とでもいうような状態でした。薬の効能書や菓
子の宣伝文はもとより、畳上げで出てきた古新聞を読み始めると、掃除を忘れ
て親に叱られるほど没頭したものでした(笑)
雲:なるほど。その後、高知市で成長されたのでしょうか?
片:いえ、巡査をやめた父が大阪に出て運送業を始めたことに伴い、大阪の学校に
通うことになりました。日本は徐々に戦争に入っていき、本の流通量も減って
きたので友人と古本屋通いをしたものでした。
雲:その頃はどんな本を読まれたのでしょうか?
片:大日本雄弁会(現講談社)が学童向けに発行していた『少年倶楽部』は、時勢
に合わせて陸軍系の『若桜』と海軍系の『海軍』という名前になっており、そ
れを皆が読んだものでした。当時の男の子は皆軍人になるんだと信じて疑わな
い、悲しい時代でした。
雲:偏った教育の恐ろしさが分かるエピソードですね。
片:ただ、同時に日本プロレタリア文学の嚆矢である小林多喜二の『蟹工船』や、
マルクス主義を伝える本も隠れて読んだ記憶があります。国のために死のうと
考える皇国少年でありながら、社会主義思想に触れて胸を熱くするような、激
動の少年期でした。
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雲:大人になってからはどのような読書を?
片:戦後すぐ、米国の情報誌である『リーダーズ・ダイジェスト』の日本版を定期
購読していました。ある時そこに、本を読むスピードを上げなさい、という言
葉がありました。脳を鍛えることで、読書スピードは上がるというのです。当
時の私は文庫本であれば一晩に2、3冊は楽に読めたものです。
雲:雲の上の図書館ができる前の図書室も、よく利用していただきましたね。
片:ええ、あちらにあった本で読みたい本はほぼ読み尽くしてしまい、これは!と
思った*本の貸出カードを見ると自分の名前があってがっかりしたような事もあ
りました(笑)
*小さな図書室時代は貸出カード方式だったそうです。
雲:雲の上の図書館の計画を知った時は、どんなイメージをお持ちでしたか?
片:地区の説明会で聞いた話からは、図書館というよりも総合的な文化施設かなと
思いました。果たして自分が使いこなせるのか?という心配はありました。
雲:雲の上の図書館が開館してからは、どのように感じられたでしょうか?
片:建物自体を初めて見たときは、やや奇抜かなと思いました。しかしその後現在
に至るまで観光の方が沢山訪れているという事実は、優れた建物の証拠だと思
います。何よりも、時間をかけて各コーナーや毎月変わる新着棚を見る度に、
読みたいと思っていた本がちゃんとあったり、興味を掻き立てる未知の本と出
会えたりして驚きます。
雲:それは何より嬉しいお言葉です。どのような本を読まれますか?
片:歴史が好きで、昔は学術的な本もたくさん読みましたが、今はもっぱら時代小
説や推理小説など、読みやすい本がほとんどです。しかし時々出会う専門的な
本に感銘を受けることもあります。
雲:最近ではどんな本がありましたか?
片:宮本常一他、民俗学の識者が共著した『日本残酷物語』や、永井晋の『平氏が
語る源平争乱』が印象に残っています。それから城邦子の『権七の大太刀』も
興味深い内容でした。
雲:雲の上の図書館にご要望があれば、お聞かせください。
片:何より気がかりなのは、充実した蔵書の状態を維持する予算を今後も確保でき
るのか?という点です。常に新しい知識や本を入れ続けるのは大変なことだと
思いますが、ぜひ頑張ってください。私が元気なうちは終生利用させてもらい
ます(笑)
雲:ご期待に添えるよう頑張ります。
片:私がこの図書館で好きな光景は、お母さんが見守る中で赤ちゃんがハイハイを
していたり、子供たちが元気に遊んでいる様子です。これまでの図書館の概念
を打ち破り、これからの図書館の在り方を教えられる思いでした。この光景を
守っていただければと思います。
雲:貴重なご意見、肝に銘じます。本日はありがとうございました。
最後に、現在オススメの本を3冊教えてもらいました。