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8月10日は江戸時代を代表する俳諧師・浮世草子作家の井原西鶴の忌日
です。貸本屋などの庶民の娯楽としての読書が普及しはじめた江戸時代前期
に活躍し、浮世草子という江戸時代の文学を成立させました。
江戸時代以前の文学は現在のように書店に並べられて買われるものでは
有りませんでした。例えば、源氏物語であれば執筆時の主な読者は宮中の
貴族のみで、一般大衆の娯楽ではなかったのです。
しかし、江戸時代になると、印刷技術の普及により本を複製するという
ことが格段にしやすくなりました。これにより、一般大衆にも娯楽として
の読書が可能になり、貸本屋や印刷業者といった職業が登場しました。
西鶴の書いた文学はこのような背景を織り込み、売れるための作品作り
がされているものでした。処女作である『好色一代男』は源氏物語を主と
するパロディ作品で、読者層が大衆であるということを踏まえ、主人公を
貴族ではなく連想しやすい裕福な庶民にするなどの改変を行い、人気を博
しました。
今日紹介する一冊はこの好色一代男も収録されている
『日本文学全集 11巻』(池澤夏樹/編)です。
大衆に読まれる前提で書かれたものという知識があれば一層楽しめると
思いますので、ぜひ読んでみて下さい。